養親さんへのインタビュー

「みんなで助け合って家族になろうね!」「うちに来て本当によかった」と、最後に言ってもらえる家庭を作りたい
小学生二人の育ての親となったBさんご夫妻。
「神様が私たちに与えてくれた」と、夫妻は多感な年齢の兄妹を養子として迎えた。やんちゃでとても甘えん坊な姿がお話からも想像できる、愛らしいお子さんたち。

――養子縁組でお子さんを迎えるにあたっての経緯をお聞かせください。
私は33歳から不妊治療を始めて7年程治療していましたが、流産した経験もあり、結果治療を止めました。その時にある団体を紹介されてご挨拶に行きました。そして昨年、団体の方から、「こういう兄妹がいるのですが、お世話をお願いできないですか?」という内容のお話を頂きました。そんな時に自分の予定とは関係なく、養子縁組を迎えた方とお話するという偶然の出来事もあり、「これは神様の導きなのかな」と夫婦で思いました。
「神様が私たちに与えてくださったので、障害のある子や性格がどんな子でも、バックグラウンド関係なしにその2人を受け入れよう」と、家内に言いました。
2人で話し合いを重ねて最終的には主人が決めました。私たちの親もすでに高齢でこれから介護が始まるなど経済的な事や、私たちの年齢で、肉体的、精神的にも子育てを考えるとどうなるのか? 冷静に考え、躊躇する部分ももちろんありました。
――2015年にご兄妹を縁組されたということですね。
はい。実の兄妹を迎えました。この子たちは複雑な家庭から迎えた兄妹です。私たちはこの子たちと1年間向き合ってきて思うのですが、育てられないのならできるだけ早く赤ちゃんの頃に手放して欲しいという気持ちです。縁組になるまでに心の傷をたくさん受けてから、新しい家庭に入っても傷は治りにくいと思います。
――複雑な家庭というのは……。
産みの親や、再婚した家庭、親族の家などを転々としたそうです。そして私たちのところに来て今、ようやく2人の性格が表れてきている状態です。僕らを愛し続けてくれるのか? 一生関係を持ちつづけてくれるのか? と、私たちは試されている時期だと思います。あまり見せないですが、あの2人はとても頑張っていると思います。だって突然、全く知らない人の所で生きていくことになったのですから。
――最初に出会った頃の印象などを教えてください。
明るくて人懐っこい子たちでした。
どんな子でもいいと覚悟を持ってはいましたが、不思議と受け入れやすかったです。
愛されやすい子ですよ。でも、母親と密接につながっていなかったので、ひとみしりをせず、周りの人にすぐなつく部分も持っていると思いました。他人行儀もなしに最初から私たちを親として普通に接していました。
――お子さんたちはご両親を何と呼ばれますか?
お父さん、お母さんです。でも最近では時々、父ちゃん、母ちゃんと言ってくれるので、私たちに甘えられるようになってきたのかな(笑)。特に長男はとても愛情に飢えていると感じていて、その反動がたまに乱暴な行動に出ることもあるので、10歳になった今でもひざの上に乗せたり、ハグをしたりします。ただ、異性に興味を持つ年頃にもなってきたので、もうあまりハグはできなくなりますね(笑)。
――養子を迎えての大変さなどはありますか?
本当に養子縁組は覚悟がないと、です。でも、縁あって私たちの元に来てくれた子供たちですから、これからは、自分は人に愛されていい存在だとわかって大人になってもらいたい。「愛されている、愛する」が、私たち家族の土台だと思っています。
――家族になっての喜び、幸せだなと思うときを教えてください。
2人とも小学生なので授業参観や運動会もあって。でも、以前は来てくれる人もいなかったようです。だから私たちが行くと興奮してしまって、教室の後ろにいる私たちの方ばかりを見たり、わざと椅子をガタガタさせたり(笑)。そういう愛らしい姿はやんちゃな面もありますが、とても可愛くて幸せな気持ちになります。だからこそそんな姿を見るにつれ、周りの大人は、どうしてもっと目に見える愛情を注いであげられなかったのかと思う気持ちはあります。ただ、自分たちの体力や経済力ではやっていけないというのもあり、産みの親や親族は2人を手放している部分もあるとは思います。冷静に見ると大人だけの責任でもないですし、子供だけの責任でもないと感じます。
――お子さんから言われた、印象的な言葉はありますか?
「5年前にうちに来ていればよかった」と子供たちに言ってもらったことです。先日レジャーランドに遊びに行って本当に喜んでいましたし、去年、私の母方の叔母の所に行き、海辺で遊んで大喜びでした。今まで家族で旅行に出かけたり、海に行ったりしたこともなかったそうです。家ではみんなでカードゲームをして遊んだり、夫は将棋やオセロを教えていたりします。
私の中で少し考えがあり、息子は先の事を考えられないのではと思ったので、将棋やオセロを教えています。
何をしたら、その結果どのようなことになるのか?が、分からないなど因果関係がつながらない傾向があるので、主人が先を読む訓練を楽しみながら教えているんです。
――一年が過ぎ、お子さんたちに変化はありましたか?
一年かかりましたが、ようやく靴のかかとを潰して履かなくなりました。
子どもはよくやりますけどね(笑)。
我が家に来て一年経ったときに、この一年を振り返ってという内容の作文を書かせました。子供らしくいろいろ書いてありましたが、「お父さんとお母さんの子になれて嬉しい」と書かれてあったのはとても嬉しかったです。お風呂で私たちと話をするのも楽しい様子で、妻は娘と、私は息子とときどき一緒にお風呂に入っています。
泡のお風呂を作ったらとても楽しそうでした。私が娘の身体を洗ってあげるととても嬉しがってくれます。娘がよく話してくれるのでお風呂で私がのぼせてしまう程です(笑)。
――周りへの告知はどうされていますか?
近所の方には、「家族が増えました!子供たちです。よろしくお願いいたします」と紹介することにしています。親や親戚には、養子縁組をする前に私たちが当時得ていた子供たちの情報をかなり細かく手紙で書いて伝えました。
ただ、小学校のお友だちにはあまり知られたくないのもあり、昔の苗字が書かれた物は消して書き直したり、新しい物を買ったりしています。
実は子供たちは何度か苗字が変わっていまして、2人の持ち物を見ると、前の苗字に簡単に斜め線をして新しい名前を書いてあるだけだったんです。それで私たちが前の苗字を修正ペンで消したり、布を張り替えたり、跡形もなく全部書き換えました。
ある時、息子が自分のジャンパーを着て行かないんです。寒いのになんでだろうと思ったら、内側に前の苗字が書いてあったんです。そういう繊細な年頃でもあるんです。
親戚の方が2人に洋服をプレゼントしてくださり、娘も息子もそればかり着ていました。またある日、私が子供の頃に使っていたピンク色のお布団の上掛けを息子にあげたら、肌身離さず持っているのです。ボロボロになっても手放さないんです。主人に叱られるとその上掛けを身体にくるんでいたり、私が少し忙しくてかまってあげられなかったりすると、それにくるまって寝ていたりするんです。
――ご両親は、ご夫妻が養子を迎えることについて何か言われていましたか?
養子を迎えることには了承を得ていましたが、大きな子を引き取ることになった時、正直難しい気持ちはあったと思います。
結局、子供は出て行くのではないか? など、私たちもそうですが、両親にとっても初めてのケースで心配だったと思います。
それは市役所なども同じで、書類ひとつにしても初めてのケースで係の方も右往左往していました(苦笑)。
事務的な事も大変でした。私たちは仕事で何年も前から国際会議のため海外に行くことが決まっていて、息子と娘をおいていけませんので、彼らのパスポートを取る必要がありました。その際に、まだ2人の縁組が戸籍上変わってないので、私たちの名前では取れなかったんです。そうすると親権を持っている方に承諾書をもらって手続きをしたりと、ハードルが高かったですね。健康保険も苗字が違う時期は社会保険に入れないと知りました。小さい事の積み重ねでしたが、わからないことがたくさんありました。
日本では昔から家を守るための養子縁組はありますが、子供を守るための養子縁組はまだ一般的ではないのだと感じました。家のため、働き手のため等、大人での養子縁組は一般的なのかも知れませんが、子供が子供として育つための養子縁組というのはまだまだなのかも。書類一つでも壁にぶつかりましたし、周囲にできるだけ知って欲しくないのに、病院などでは大きな声で息子たちは旧姓で呼ばれていました。
――現在は戸籍も変わられたんですね。
はい。裁判所の方も本人たちと面談するなど手配してくださり、戸籍上も私たちの子供になりました。でもこれで戸籍上は実の親と切り離されるので、本当は少しかわいそうな気もします。子供たちには、「産みのお父さんもお母さんもおじいちゃんもあなたたちを愛してなければ一時の間でも面倒は見ることはできなかったはずです。あなたたちを大切に思っているからこそ、いい方法で私たちを探してくれたんだよ。だから感謝しなさいね」と、言っています。
――家族として一番大切なのは?
“愛情”だと思います。本当に血のつながりは関係ないです。ある日子供たちに、「私たちは夫婦として愛し合っているように見える?」と聞いたことがあって、そしたら「うん」と言ったので、「お父さんもお母さんも血のつながりはないんだよ。血のつながりがなくても愛し合って一つの家族になれるんだから、あなたたちも大丈夫、みんなで助け合って家族になろうね!」と言いました。いつか自立するそのときに、「うちに来て本当によかった」と、最後に言ってもらえる家庭を作っていきたいと思います。
ある日、お母さんと小さい子が歩いているのを見たうちの子が、「本当の親子はいいな」とぼそっと言ったことがあって、私は「実父や実母のことを産みのお父さん、お母さんと言ってもいいけど、本当のお父さんは私だから、そういう風に言わないでね」と。大人でもいますよ、「本当のお子さんですか?」と聞く方が。もちろんそれは悪気があってではないのですが、いつかチャンスがあったらちゃんと「私たちはこの子たちの本当のお父さん、お母さんです」と堂々と言いたいです。
本来なら実の親と一緒にいた方がいいに決まっています。でもそれができないのなら、愛してくれる人が傍にいる、そういう家庭に早く委ねて頂けたらと思います。